デュアルライフ(二拠点生活)に必要な年収。500万未満で実現可能は本当か?

二拠点生活の最大のネックは「お金」

デュアルライフ(二拠点生活)に興味があって、Dualizm のサイトを見つけてくださった人も多いと思います。

「デュアルライフをしたい!」という願望はあるものの、いろいろな壁にぶつかって、なかなか行動に踏み出すのは難しいものです。

Dualizmでは、デュアルライフの実現を阻む様々な課題の一つ一つに対して、乗り越えるための現実的な方法や選択肢を考えながら、皆さんのデュアルライフ実現をサポートしていきたいと思っています。

デュアルライフを実現するためのネックになるものには、次のようなものがあります。

・メインの住居とサブ住居の家賃、二拠点生活先との交通費など、デュアルライフにかかるお金を捻出できるか?

・今の仕事とデュアルライフを両立可能か?

・パートナー/子供/家族の理解を得られるか?

これら3つの問題の根底にあるのは、「お金の心配」であるように思います。

デュアルライフに必要なお金を得る手段が仕事。ところが、仕事が忙しくてデュアルライフを実践する余裕がなければ意味がありませんし、デュアルライフの余裕を作るために仕事にかけるエネルギーを落とせば、収入が下がる結果にもなりかねません。

また、デュアルライフに抵抗を感じているパートナーを説得して安心感を持ってもらう材料としても、やはりお金が必要になります。

住居を2つ持つことで、日々の生活費が圧迫されないか?子育てに必要な教育費などを確保できるか?将来に必要な貯金がおろそかにならないか?などなど。

この記事では、

・二拠点生活をするために必要最低限の年収額

・どのくらいの年収で、どんなレベルの二拠点生活ができるのか?

について解き明かしていきたいと思います。

年収400万~500万で二拠点生活ができる説

「二拠点生活 年収」と Google で検索すると、様々な情報が出てきます。

そんな中で、「二拠点生活は年収500万円OK」「年収400万円未満でも二拠点生活」といった情報を紹介したサイト見かけました。

それぞれの主張についてみていきたいと思います。

年収500万での二拠点生活

2019年2月22日の「東洋経済オンライン」に、次のようなタイトルの記事がありました。

年収500万円でもOK、「2拠点生活」の実現法  / 発想と工夫で「二重の住宅費」は克服できる

この記事では、東京都世田谷区 ⇔ 千葉県いすみ市 の二拠点生活をしている、30代後半の男性について特集されていました。

この30代後半の男性は、既婚者で子供持ち。アパレルのインターネットショップを運営する仕事をしているようです。

震災後に物件の値段が下がった時期に都内のマンションを購入し、二拠点目の古民家の購入費用を捻出するため、数年間住んだのちにに売却。マンション購入時と売却時の価格差で 700万円以上の利益が出たとのこと。

二拠点目として購入する古民家は、立地や築年数などを考慮しながら探し、取り壊し前の物件を値下げ交渉の末、500万円で購入されました。

マンションの売却益700万円と古民家の500万円の差を考ると、プラスの収支となっていることが分かります。

現在は、都内の賃貸物件で平日を過ごし、週末は家族と一緒に千葉県いすみ市の古民家で田舎ライフを楽しんでおられます。

「東洋経済オンライン」元記事はこちら

 

この事例では。年収が500万円でも、不動産の売買テクニックや、古民家を安く購入する工夫によって二拠点を実現した例。

この方法では、「二拠点をしたい!」と思い立った瞬間にデュアラー(二拠点生活実践者)になれるわけではなく、不動産という資産を長期的に運用した結果、二拠点を実現できた例。

不動産の運用にはリスクがあり、必ずしも利益が出るわけではないということを忘れてはいけません。そして、運用する不動産を購入するためにも、お金が必要になります。

株式などの運用でも同様。デュアルライフの費用を確保するために何かしらの資産運用を考えている人は、様々な情報やリスクを考慮して慎重に投資先を選ぶ必要があります。怪しい情報もネットにはたくさんあることですし。

またこのケースでは、「世田谷区の賃貸」+「千葉の古民家」という住まいの組み合わせ。

家賃が高い世田谷区の賃貸で、家族で住める間取りの物件を考えると、月々にそれなりの家賃が必要になります。それに、自分の資産ではなく賃貸なので、手放してもお金に換えられませんし、担保にもできません。

一方で千葉の古民家は、取り壊し寸前の物件を安く買い取ったもの。何かの事情で手放す必要が生じた場合、高い金額で評価されることは期待できません。

この状況において夫の年収が500万で、世田谷の賃貸の家賃と子供の将来を考えると、妻の共働きは不可欠でしょう。

デュアルライフの実現には、個人の年収がいくらあるか?という問題以上に、世帯年収がどのくらいあるか、という問題の方が重要であるように思います。

やはり、デュアルライフの実現には、パートナーの理解と、金銭や労働面での協力が不可欠です。

年収400万未満での二拠点生活

次に見つけたのは、「年収400万円未満でも二拠点生活可能」という情報。

この情報は、EL BORDE (エル・ボルデ) というweb マガジンで見つけました。

 

実際にEL BORDE の記事を見てみると、リクルートが2019年2月20日に発表した「デュアルライフに関する意識調査」のデータを引用し、

・デュアラー(デュアルライフ実践者)の半分以上が、20~30 代

・デュアラーの16 % が、世帯年収400万円未満

という意識調査の結果から、「年収400万円未満でもデュアルライフ可能」という結論を下しているようでした。

残念ながら、「東洋経済オンライン」にあるような、デュアルライフ実践者の具体的情報はありませんでした。

 

EL BORDE (エル・ボルデ) というweb サイト名は、スペイン語で「先端、境界」という意味で、野村證券が運営しているwebメディアのようでした。

二拠点生活者の年収・年齢データを考える

リクルートが2019年2月20日に発表した「デュアルライフに関する意識調査」のデータから、デュアラー(デュアルライフ実践者)の世帯年収に関する部分を引用してみたいと思います。

世帯年収 / 円 割合 / % 累積 / %
400万未満 16.2 16.2
400万以上 ~ 600万未満 18.2 34.4
600万以上 ~ 800万未満 18.2 52.6
800万以上 ~ 1000万未満 14.8 67.4
1000万以上 ~ 1500万未満 19.6 87.0
1500万以上 13.0 100.0

デュアラー(デュアルライフを実践者)のうち、3割強の人が、世帯年収600万未満。約半数の人が、世帯年収800万未満であると分かりました。

このデータをそのまま事実として受け取ると、「デュアラー」の人たちの実態を見誤ってしまう恐れがあります。

このデータで示し切れていないこと、それは、「貯金額」や「所有資産額」です。

バリバリ働いて、ある程度貯金が溜まって、収入を落とすことと引き換えに、デュアラーの道を選んだ人もいるでしょう。極端な例ですが、年収400万円未満でも、貯金が3000万円あれば、かなり悠々としたデュアルライフが送れるでしょう。

併せて、デュアルライフ実践者の年齢のデータを見てみましょう。

年代 割合 / % 累積 / %
20代 27.9 27.9
30代 29.1 57.0
40代 16.5 73.5
50代 13.1 86.6
60代 13.3 99.9

 

単身の20代や、子育てを卒業してある程度貯金が溜まった50~60代は、二拠点へのハードルは比較的低いです。

年齢データを見ると、働き盛りで子供も育ちざかりな30代~40代のデュアラーが、合わせて45% もいるのが驚きです。

2019年は「デュアルライフ元年」とも言われており、「年収400万円や500万円でも手軽に二拠点生活ができる!」みたいな情報は今後も増えていくと思われます。

それでも、子育て世代が、世帯年収400万円未満でデュアルライフに踏み切るのは現実的ではありません。

先ほどの年収データと年齢データを合わせた、「デュアラーの年齢別の世帯年収分布」のデータがあるといいのですが…。

30代や40代の子持ち世代で、デュアルライフを実践している人たちの世帯年収はどのくらいなのか、引き続き調べてみたいと思っています。

独身&民泊の活用で、年収400万の二拠点生活

デュアラーと子供の有無の話題に触れたついでに、デュアラーの家族形態(単身、既婚、子供の有無)のデータについて見てみましょう。

年代 割合 / % 累積 / %
単身 15.0 15.0
既婚 子供なし 24.6 39.6
既婚 子供あり 40.6 80.2
その他 家族構成 19.8 100

独身でデュアルライフを実践している人が、全体の15% です。

独身の身軽さを生かし、地方の民泊やコリビングサービスを活用することで、二拠点目での居住費・家賃を2万以下に抑えることは可能です。

都内でシェアハウスをしたり、部屋の条件を妥協して家賃を抑えて「メイン拠点の家賃+二拠点目の居住費」の合計を月額10万円抑えたとすれば、年間の支出は120万円。

料理して生活費を節約したり、物や服を減らしたりすれば、独身の年収400万でもデュアルライフは実現可能です。

20代デュアラー×ミニマリストは相性がいい

独身の年収400万円でも、生活費の節約や物を減らすことで実現できるデュアルライフ。

まだそれほど年収が高くない20代のデュアラー志望者にとって、ミニマリスト的生活は非常に相性がいいライフスタイルです。

もしかしたら、「身軽さ」や「自由さ」を重視するあまり、「結婚しない」や「子供を持たない」といった、家族や人間関係までもミニマルにして、自分の好きな場所で自由に生きていくという価値観も現れてくるのかもしれません。

車は持たない、住まいや空間など、様々なものを「シェア」する価値観が浸透し始めている20代の若者世代。

住まいや物を所有するためのコストを極限まで減らしたミニマリスト的生活で、都心で仕事をして、地方でのんびり暮らすデュアルライフは、若者たちの間で広まっていくことでしょう。