リクルートが「デュアルライフ」を2019年の予測トレンドに
2018年も終盤に差し掛かった12月17日、リクルートが2019年の住まいに関するトレンドを発表したらしい。
正確には、トレンドを発表したのはリクルートホールディングスではなく、suumoを手掛けるグループ会社のリクルート住まいカンパニー。
「住みたい街ランキング」を発表したり、駅で見かける住まいのフリーペーパーを作っている会社だ。
発表されたトレンドは、「デュアルライフ(二拠点生活)」と、それを実践する人たちを表す「デュアラー」。
古民家や空き家、シェアハウスがより手軽に利用できるようになり、都市部に住む20代や30代を中心に、平日は都市部で仕事、オフの日は地方部や田舎でのんびり過ごす「デュアラー」が増えていくという予測らしい。
僕が「デュアラー」という言葉を初めて触れたのは、何気なく聴いていたラジオだ。
その時聴いていたのは、80.0 MHz の Tokyo FM で、月曜~木曜のお昼に放送されている「高橋みなみの これから、何する?」という番組。
3月14日 木曜日の放送で、リクルートの社員の人がラジオに出演し、「デュアラー」というトレンドについて解説していた。
2019年のトレンド予測「デュアラー」 とは -Tokyo FM
ラジオの放送を聴いたときは、素直に「いいじゃん、デュアルライフ」という感想を持った。
地方出身で、東京で大学生をやっている僕であるが、根っこは田舎者。自分のどこか深い部分で、東京に合っていない部分や東京に疲れている部分があるのかもしれない。
それ以来、「デュアルライフ」「二拠点生活」「デュアラー」というテーマに対する興味がずっと自分の中にあったこともあり、「Dualizm」を立ち上げることになった。
リクルートのトレンド予測を冷静に見極める必要性
「デュアルライフ」への注目が高まっている今の状況に、自分自身は「デュアルライフが注目されているけれど、何か重要な部分が抜けている」という違和感を感じている。そして、このトレンドを冷静に受け止める見方も必要なのではないかと感じている。
「令和元年はデュアルライフ元年」と言わんばかりに、デュアルライフのトレンド予測をプッシュしているのが、「あの」リクルートであることを忘れてはならない。
多くの人々がデュアルライフを実践すれば、日本のライフスタイルカンパニーであり、住まい情報サービスも手掛けるリクルートが儲かるのは間違いない。
リクルートのトレンド予測とは往々にして、「本当にトレンドになるものの予測」というよりも、「トレンドにしたいものの予測」であるという側面の方が強いように思われる。
スーモなどの不動産・賃貸情報サービスがが発表している「住みたい街ランキング」だって、「人々が本当に住みやすい便利な街」というより、「不動産屋が人々に住ませたい街」に過ぎない。
東京の住みたい街ランキングの上位としてよく取り上げられる、吉祥寺や武蔵小杉。
吉祥寺は、都心から離れている割には駅近物件の家賃相場はかなり高い。都心へ通勤・通学するには、満員の中央線快速に乗る覚悟を持ち合わせている必要がある。
東京駅にJR一本で行ける武蔵小杉は、タワーマンションの林立地帯。通勤ラッシュ時は駅に入場規制がかかるほどの混みっぷりだし、タワーマンションに家族世帯が多く集まったことで、待機児童も問題になっている。
かくして、「トレンド予測」や「住みたい街ランキング」など、企業のPR戦略の一端としてリリースされる情報にはリテラシーを持って、ある程度批判的に捉える視点が欠かせない。
特にリクルートは、人々のライフスタイルに様々なサービスを浸透させるためにこの手法をよく使う。結婚情報誌のゼクシィ然り、就職や転職に関する情報も然り。
それでも、リクルートの打ち出している「デュアルライフ」は、自分自身も憧れている生活スタイルであるし、世の中に広まれば、人々の幸せや地方の活性化にもつながるという確信を持っている。
トレンド予測は当たるのか?リクルートの過去の予測
ブロガーやwebフリーランスの界隈には、「デュアルライフ」のトレンド予測が発表されるよりも前から二拠点生活をしている人は多い。
リクルートのトレンド予測で勢いを得た「二拠点生活ブロガー」は、「やっと時代が追い付いてきた」とばかりに、発信の動きが活発になることは間違いない。
事実、リクルートが「デュアルライフ」のトレンド予測を打ち出して以降、ブロガーだけでなく、ラジオのコーナーや大手webメディアでも、「デュアルライフ」がよく取り上げられるようになった。
リクルートが「デュアルライフ」を発表発表したことは、それなりに社会にインパクトを与えているようだ。
それでは果たして、リクルートが毎年予測している「トレンド予測」は本当に当たるのか?信用に値するのか?
過去のトレンド予測をひも解いて、リクルートのトレンド予測の成否を検証していきたい。
リクルートが初めて行ったトレンド予測は。2010年に向けたもの。2019年に向けたトレンド予測で、ちょうど10回目になる。
トレンド予測 アーカイブ – リクルート を参考に、過去のトレンド予測と、その説明をまとめてみた。
リクルート 過去の代表的なトレンド予測
年 | 予測内容 (分野) | 説明 |
2010 | Wエコ志向 (住宅) |
新築住宅は、太陽光パネルでエコに優しくなる 中古住宅 × リノベーションで、より経済的(エコノミカル)に |
2011 | ソー活 (人材) |
ソーシャルメディアを活用した、双方向のコミュニケーションができる就職活動スタイルが広まる |
2012 | 綺麗男(きれお) (美容) |
20代男性を中心に、化粧品や美容に対する意識が高まる |
2013 | 寮内留学 (教育) |
大学の学生寮に外国人留学生を受け入れる動きが加速し、留学しなくても、学生寮内でグローバル交流が可能になる |
2014 | 〇2(マルニ)婚 (結婚) |
離婚率の増加とともに、再婚がより一般的に。 再婚カップルの挙式や披露宴をオープンに行う動きが加速する |
スマ勉 (教育) |
好きな場所、好きな時間で、何度も復習できるスマホアプリを活用して大学受験対策を行う高校生が増える | |
2015 | 部ランチ (飲食) |
夜に開催される職場の飲み会や忘年会が負担な人も多い。 職場の飲み会が、ブランチの昼の時間帯に開かれるケースが増加 |
プチ勤務 (人材) |
現場の人で不足で、シニア世代や主婦を活用した「超短時間勤務」スタイルが普及する | |
2016 | 住民経営 マンション (住まい) |
タワーマンションブームの中で建設された物件が修繕を迎える。 住民参加の経営がなされているかが、マンション選びの新たな指標に |
横丁 ルネサンス (飲食) |
女性の間で赤ちょうちん居酒屋が人気に。常連客との交流も活発に | |
2017 | パズワク (人材) |
個人の望む働き方や得意分野をパズルのように組み合わせた、柔軟で多様な活躍の道が開かれた職場づくりが加速 |
2018 | ボス充 (人材) |
若手世代がワークライフバランスを実現できるよう、マネジメント層が 率先してプライベートを充実させる動きが活発化 |
上では、毎年発表されているトレンド予測のほんの一部に過ぎない。
さまざまな事業領域をもつリクルートは、大きく分けて「美容」「仕事・人材」「教育」「婚活」「住まい」のそれぞれに対して、毎年「トレンド予測」を行っている。
過去のトレンド予測を見て、「だいぶ外れている」とか「全然トレンドになってない」という感想を持った人も多いかもしれない。僕自身も、そんな印象をもった。
さらに調べてみると、毎年「トレンド予測」を行っている意義として、リクルートは公式サイトで以下のような見解を述べている。
リクルートグループは、日々のクライアント企業やユーザーの皆様との関わりの中で、各業界の活性化や社会課題の解決を提案したいという思いから、未来について思考をめぐらせ、社会と向き合ってきました。
リクルートグループはトレンドを「社会における良い兆し」と捉えています。この兆しを毎年発表することで、各業界の活性化・社会課題の解決に寄与したいと考えています。
リクルートが発表している「トレンド予測」の説明から察するに、このトレンド予測は、「流行語大賞」「今年のヒット商品」のような、爆発的なトレンドを予測する、という意味合いではなされていない。
様々な業界領域の動きを長期的に捉え、今の社会をいい方向に変えていく「兆し」「きっかけとなる動き」を紹介し、トレンド予測として発表することで、社会に広く知ってもらおうとしている狙いがあるのではないかと僕は感じた。
2019年でのトレンド予測に共通すること
2019年のトレンド予測である「デュアルライフ」は、「住まい」領域でのトレンド予測。
ほかの分野での2019年のトレンド予測は以下の通りだ。
リクルート 2019年の各領域でのトレンド予測(一部)
領域 | トレンド予測 | 説明 |
住まい | デュアラー | デュアルライフ(二拠点生活)実践者 |
人材 (新卒) |
就域 | 従来の就活に、地域に根差した人材を育てる動きが加速 |
人材 (中途) |
職場スカウト採用 | 人事だけでなく、採用後のミスマッチを減らせるよう、一緒に仕事する現場が採用マッチングに関わるケースが増加、 |
人材 (派遣) |
留Biz大学生 | 外国人留学生が、学業と派遣やインターンを両立しながら、キャリア経験を積む動きが加速 |
美容 | サロ友 | 美容院が、中世の「サロン」のように、地域で同じ趣味を持つ人たちをつなげる場に |
飲食 | ポータグルメ | おいしいのはもちろん、テイクアウトや持ち運び可能で時間の効率がよいメニューや飲食スタイルが人気に |
様々な領域でのトレンド予測がある中で、「デュアラー」に関する記載が一番トップに来ていた。
これにはもしかしたら、デュアルライフに関するリクルートの予測の本気度、強調したい意図があるように思える。
その狙い通り、トレンド予測されているワードをそれぞれ調べてみた中で、「デュアラー」に対する反響が一番大きかったように思う。
2019年のトレンド予測は、大きく分けて次のポイントに集約されると思う。
1.地方の活性化:デュアラー、地方に根差した若者人材
2.人々のつながりの再構築:デュアラー、サロ友
3.個人の望む働き方の実現
:デュアラー、職場スカウト、ポータブルなグルメ → 職場のランチの効率化で、プライベートな時間を確保
デュアルライフには、地方の活性化、田舎暮らしによるあらたな人々との出会い・つながり、そして、デュアルライフを実現できる働き方、プライベートな時間の確保など、これらすべての要素が含まれる。
だからこそ、住まいサービス、働き方サービスに強みを持つリクルートは、必死になってデュアルライフを浸透させようとしているのかもしれない。
それでも、デュアルライフに対する人々の憧れを掻き立てようとする動きばかりが先行して、実現するための課題や具体的アクションに関する部分に関する情報があまり深められていないのがちょっぴり残念だ。。
このサイトでは、
・デュアルライフを実現するためのネック、課題を解消する方法
・デュアルライフを実現ための具体的な方法、実現するためにかかる具体的な費用
・デュアラー(デュアルライフ実践者)の事例
・デュアルライフを確立するまでの自分自身の体験
を伝えていきたいと思っている。